第弐話 「次代への継承」 – 幸楽鳥一家

第弐話 「次代への継承」

 

窓からの少し湿った風が頬を通りすぎる。

いつもとは違う気だるさが全身を襲う…

いつも取る行動が咄嗟に取れなかった。

目覚ましが鳴る寸前で完全に目が覚めた。

PPP…!

目覚ましが鳴った瞬間に慌てて止める。

 

 

「あ…危なかった…私もまだまだ修行が足りないな…」

 


今日は何があっても寝坊は出来ない

何故なら、今日はお父様が稽古をつけてくれる特別な日だ

月に一度の私とお父様の対話の日と言っても良い

 

先月はやっとお父様に一撃を入れる事ができた

今日こそは一本を頂く…!

 


「わっ!もうこんな時間?!急がなければ!」

 


などと考えていたら思いの外時が過ぎていた

急いで支度をして練習場に向かわねば

 

 


「お待たせして申し訳ありません!お父様!」

 

「フム…儂もいま来た所じゃ」

 

「本日のご指導、よろしくお願い致します」

 

「いや、今日の稽古は儂がつけるのではない」

 

「……???仰ってる意味がわかりません???」

 

「今日の稽古は彼につけてもらう」

 

 

そう言ってお父様が向いた先には…私の憧れた彼が居た!

 

 

「ラ、ラッピーバロン様っ!?!?」

 

「そうじゃ。アスカよ。もう少しで成人じゃろう?

少し早いがラッピーバロンからの粋な誕生日プレゼントじゃ」

 

「我はプレゼントという柄ではないが…

若い騎士を育てるのも我が使命。全力でかかって来るがよい」

 

 

何と言ったらいいかわからない

嬉しすぎると言葉が出ないっていうのは本当だった

 

 

「そしてこれは儂からじゃ。受け取るが良い」

 

そう言ってお父様が差し出したのは、我が家に伝わる大剣スペース・ツナだった

 

「おっ、お言葉ですがっ!

それは我が家に代々伝わる家宝であり、

正当王位継承者である姉上が持つべき物!

私ごときが頂くいわれはありません!」

 

「ふむ。儂もそう思ったんじゃが…その姉が言ったのじゃ。

使えない大剣などいらん…とな」

 

「そんなっ!姉上はこの大剣が如何に大切かわかっておられるはず?!」

 

「続けてこうも言った…

大剣適正があるアスカに譲ってくれ

そして、アスカには私を守る騎士で居て欲しい

最強の矛は飾るべきではない。

最強の騎士が持つのが相応しい。とな…」

 

 

姉上…

姉上のお心遣い痛み入ります…

この大剣に恥じぬ騎士になりたいと思います

 

 

「わかりました…皆様のお心遣い有り難く頂戴致します!」

 

「うむ。それではバロンよ。手加減無しで頼むぞ?」

 

「委細承知!」

 

 

目の前のスペース・ツナを粛々と受け取りラッピーバロン様と相対する

 

これまで相対した誰よりもプレッシャーが強い…

有り体に言えば隙がない…

 

 

 

ラッピーバロン

 

「どうした?いつでもかかってこい!」

 

 

ラッピーバロン様の闘方は先の先…

いわゆる、やられる前にやるというものだが…

こうして相対していても構えもせず、先手をも譲るとは…

私自身も未熟だとは自覚しているが、流石に舐めすぎではないだろうか?

こう見えても楽園の守護者だ!

こうなったらキツい一撃を入れて本気を出してもらう他ない

 

フェイントや不意討ちなどと言った小細工は無用だ!

 

正面より打ち据える!

 

 

「参りますっ!うぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

ガキーンッ!!!

 

 

激しい衝突音と共に大きく吹き飛ばされた!

 

 

「………Σ?!?!」

 

 

何が起こった?

一撃を入れたのは私のはずだが、攻撃をされ吹き飛ばされたのも私だった…

 

 

「ふぉっふぉっふぉっ…これは珍しいものを見せてもらったのぉ」

 

「今のが見えましたか…流石は我が王」

 

 

お父様には何が起こったか見えていた様だ

 

くそっ!何が起こった!?!?

私だけが見えなかった…

こんな未熟者相手に構えなど必要もあるはずがない!

舐めていたのは私だ

スペース・ツナを拝領し、いい気になっていたのではないか?

ラッピーバロン様と剣を交えれる事に調子に乗っていたのではないか?

 

自惚れるな!私は未だCODEすら使えぬ未熟者なのだ!

 

 

「もう一本。お願いします」

 

「………来い」

 

 

何をされたのかわからないのならば…今一度同じ太刀筋で誘い受ける

 

一撃はくらうものとして見取る!

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「先ほどと同じ太刀筋…

なるほど。被弾覚悟で見取りにきたか…

よかろう刮目せよ!」

 

 

私の剣が降り下ろされる刹那

ラッピーバロン様は剣の柄で私のツナの腹を叩いて弾いた!

 

 

パリィ?!

 

 

これがあの激しい衝突音の正体だ

 

ここからだ!

絶対に見逃すな!

 

剣撃を弾いた動作から流れるように攻撃に転じてきた

 

吹き飛ばされた攻撃はこれだ…!

 

先ほどと同様に激しく吹き飛ばされたが、今度は何をされたかわかった

 

 

「今度は何をされたかわかったようじゃな。

これが剣聖(ソードマスター)の名を欲しいままにした剣技!

イグナイトパリングじゃっ!」

 

「……グッ…攻防一体の剣技…見取らせて頂きました!」

 

「構わぬよ。いくら見取れたといえ、真似の出来る様なものではない!」

 

 

確かに…

いくら見えたとはいえ、私にあれほどの技術は無い

大振りは全て返されると思ったほうがいい…

 

ならば刺突!

 

 

「今一度お願いします」

 

 

一礼をし間髪入れずに刺突を繰り出した!

今までそこに居たラッピーバロン様の影がなくなり、刺突は空を突いた

 

 

「狙いは良い…

刺突ならば線ではなく点での攻撃だ。パリングはしにくい…

が、刺突はモーションが大きく読みやすい。」

 

 

耳元でその言葉が聞こえた瞬間、再び吹き飛ばされた

 

 

「突くのなら、避けられぬようにノーモーションから突け。このようにな」

 

 

少し離れた位置から刺突を浴びせられた

 

1…2…3…4…

 

4連発

ノーモーションから放たれる刺突はまるで見えない攻撃を受けている錯覚さえ覚える

 

 

「かはっ……

ご、ご指導…ありがとうございます…」

 

 

刺突も駄目…

ならば早く小さくパリングをされない速度だ!

 

 

「もう一本…」

 

「………来い」

 

シュッ!

 

 

狙いは当たった

小さく早い攻撃はパリングされずに、ラッピーバロン様は私の攻撃を受け出した!

 

 

「そうだ!小さく早い攻撃にカウンターは難しい。

だが…軽すぎる!パワーが足りん!」

 

 

私の剣撃のいくつかはラッピーバロン様を捉えてはいるが

 

ダメージが通っていない…

 

もっと強く!

もっと強く!

 

 

ガキーンッ!!!

 

 

ダメージを与えようと大振りになった所をパリングで狙われた

 

 

「ぐはっ……」

 

「動きが温い。我が王よ。これ以上は…」

 

「ま…待って下さい…あと一本…」

 

「その気概は買うが、この実力差ではな…」

 

「ふむ。バロンよ、すまぬが後一本付き合ってやってくれんか?」

 

「我とて手加減は出来ません…最悪のケースも…」

 

「構わぬ!我が娘よ!先月の稽古を思い出せ!

儂に一撃を入れたあの時を!」

 

「先月の稽古…」

 

 

 

先月、お父様に一撃を入れたあの時は…

稽古の最後でクタクタに疲れていて…

体に力が入らなくて…

でも剣は軽く感じていて…

 

 

―――――ッ!

 

 

忘れていた

動きに無駄な力をいれるな

剣を手足の延長のように扱え

 

思い出せ…

あの一撃を入れれたあと…

お父様の言った言葉を…

 

 

 

―――――明鏡止水

 

 

 

これまでに受けたダメージは軽くない

 

次が本当に最後の攻防になるだろう

 

ラッピーバロン様と剣を交えれるのだ…せめて一太刀…

 

 

「………フゥ」

 

「ほぉ?顔つきが変わったな。騎士の顔だ。」

 

「ラッピーバロン様。もう一手ご指導お願いします」

 

「よかろう。全力でお相手致す!」

 

 

初めてラッピーバロン様が構えた

 

 

「推して参る!」

 

 

初撃はラッピーバロン様だった

恐ろしく早い振り下ろし

 

しかし、見えている!

 

 

「しっかりと見えているようだな!」

 

 

続けて横薙ぎに払ってくる

無駄な力を入れず…受け流す!

力に力で受ければ弾き飛ばされる

 

 

「良いガードだ!」

 

「シュッ!」

 

 

大振りは厳禁

小さく早く!

流れるように!

 

 

「それでは先ほどど同じだぞ!?」

 

 

私は思い違いをしていた

ダメージを通そうと力を入れていた

断じて違う!

大剣の特性は…力ではない!

剣の重さを利用した遠心力!

それがパワーを生む!

 

もっとだ!もっと早く!

 

 

「ム…?動きが…」

 

 

この流れるような剣舞を私は知っている

この剣舞に憧れ剣術を学んだ

 

ラッピーバロン様

貴方の剣舞…私のものにさせて頂く!

 

 

「そうじゃ!その攻撃こそ、バロンに届く!」

 

「フハハハッ…面白い!ならばこれはどうだ!」

 

 

 

ウォークライ!

 

 

 

ラッピーバロン様のウォークライにより、私の剣舞の流れが一瞬止まった

 

その隙を見逃すなほど甘い相手ではない

 

私に向かって剣撃が一直線に振り下ろされる

 

ここまでか…

 

否ッ!!!

 

私は…既に見ているッ!

 

 

「まだ…まだぁぁぁぁぁ!この腕!くれてやる!!」

 

 

振り下ろされる剣の腹を左腕で思いっきり叩き弾く!

 

 

 

ガキーン!!!

 

 

 

「これは…!!我がパリィ!?」

 

「うぉぉぉぉっ!!!」

 

 

大きく剣を弾かれ隙だらけの体に流れる所作で斬り上げる

 

 

「グハッ!」

 

「貴方の技は…見盗らせて頂いた!!!」

 

「見事じゃ!バロンのパリィを見事に見盗りおったわ!」

 

「はぁ…はぁ…お、お父様…ありがとう…ございます…」

 

 

全てを出しきった

ダメだ、もう…

立っていられない…

 

 

私は音を立てて倒れこんだ

 

 

 

「おぃ?大丈夫か?」

 

「気を失っているだけです。問題無いでしょう」

 

「そうか…バロンよ。儂の我が儘に付き合わせて悪かったの」

 

「いえ、まさかここまで短期間で成長するとは…正直驚きました」

 

「うむ。もう儂の力では娘に稽古をつけてやる事は出来んのぉ」

 

「何を仰いますか。我が王よ」

 

「時代じゃよ。次の世代に譲る時期を見謝ってはいかん…

バロンよ…娘達を頼む…」

 

「我は王族に仕える騎士。我が王の御心のままに…」

 

 

 

 

楽園崩壊まで…後一日

 

 

 

 

 

 

 

 

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