第参話 「楽園崩壊~序~」 – 幸楽鳥一家

第参話 「楽園崩壊~序~」

 

窓から生温い嫌な風が頬を通りすぎる。

全身に纏わりつく、嫌な感じだ…

こんなに不快で不吉な風を感じたのは初めてだ。

寝ているのか起きているのか夢うつつの状態でそう感じた。

PPP…!

なんだ?この嫌な音は…

PPP…!PPP…!

—–ッ!!!

 

 

 

「しまった!!!」

 

 

PPP…!PPP…!PPP…!

 

 

完璧に寝過ごしてしまった。

これで続いていた目覚まし時計との連勝記録が途絶えてしまった…

ガックリと肩を落としながら目覚ましを止める。

 

 

「やってしまった…最悪の朝だ…」

 

 

朝一から最悪の目覚めだ。

これ以上無いほどに。

気分は全くのらないが、朝のいつものルーチンを始める。

…が、やっぱりいつものようにキレがない。

しょうがないじゃないか!連勝記録が途絶えてしまったんだぞ?!

10年だ!10年間無敗だったのだ!

なのに…それなのに…

 

 

 

いつものルーチンを終え、喉の渇きを潤していると聞きなれた声が聞こえた。

 

 

「やぁやぁ!おはよう!姉さん!」

 

 

声の主は白い妹だった。

 

 

「おはよう…」

 

「…へっ?」

 

「なんだ?」

 

「いや、いつもは暑苦しいくらいの挨拶をする姉さんがおはようの一言だなんて…」

 

「…今日は最悪の気分なんだ」

 

「へぇ~~~~!姉さんでもテンションが下がる事があるんだねぇ~~」

 

「当然だ!私にだってそんな時ぐらいあるぞ!」

 

「どうせ目覚ましより先に起きれなかったーとかそんなレベルの話だと思うんだけど、どうだろう?」

 

 

ぐぬぬ…

なんでバレてるんだ!

 

 

「そっ、そんなわけ無いだろうっ!」

 

「あれ?動揺してる?」

 

「すっ、する訳ないだろう?!」

 

「どもってるよ?」

 

「うっ、うるさい!とにかく違うっ!

それよりこんなに朝早くからどうした?」

 

「へぇ~違うんだへぇ~」

 

「もういい!」

 

「アヒャヒャ!ごめんごめん

まぁ、なんだ。少し父上に用事を頼まれてね。これから行くところなのさ」

 

「父上から…?」

 

 

白い妹を行かせるって事は緊急を要して、更に専門的な話をするんだと思うが…

 

 

「そうそう。なーんかダーカーの動きが妙でさ?

ちょっとオラクルにまでいってアークスの上の人と話してくる訳さ」

 

「ダーカーが…?それは気になるな」

 

「そゆこと。別に私じゃなくても良い気はするんだけど、

オラクルに行くってことは【アレ】の話もすれば手間が省けるし」

 

「あぁ、【アレ】か…

どうなんだ?もう少しで完成するって話は聞いてはいるが…」

 

「う~ん…まだまだかなぁ?

フォトンコアの形成まではいったんだけど、出力が安定しなくてね~

人口靭帯を全部ぶっちぎっちゃうんだよね」

 

「なるほど。わからん」

 

「言うと思ったよ。

とりあえずそうゆう事で、本日の座学は自習でお願いします」

 

「なるほど!わかった!」

 

「早いね。秒だよ秒」

 

「しかし、一人で行くのか?護衛とかはつけなくても…大丈夫だなお前なら」

 

「いや~それがさ~?

別に私はいらないって言ったんだけどさ~?

父上がどうしても護衛をつけるって言うんだよね~?」

 

「なんだ…妙に含みがあるじゃないか?」

 

「バロンさんが護衛に付くみたいなんだよね~」

 

「なんだと!お前!許さん!」

 

「わかりやすすぎる!

でも、父上からの命令だからね。仕方ないね」

 

「ぐぬぬ…

仕方ない!本当に仕方ない!

本音を言えば変わって欲しいが!」

 

「だが、ダメッ!」

 

「うぁああぁああぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「…って、朝からネタをしてる場合じゃないんだよ。

急がなきゃ、姉さん悪いけど」

 

「あぁ、いってらっしゃい!

いいか?絶対にラッピーバロン様に失礼のないようにな!」

 

「へいへい。わかりました。

…じゃ、気分も戻ったでしょ?いってきます」

 

 

—–やられた…

あの白い妹め…

最悪の気分だった事を忘れてしまっていたじゃないか。

なんだかんだ、やっぱり白い妹はいいヤツだ!

 

しかし、白い妹とラッピーバロン様が不在か…

鳥類最強の矛が二本も同時に居なくなるとは

何事も起こらなければいいが…

 

 

「まっ、考えすぎか!

それより座学が無くなったことを素直に喜ぼう!

よしっ!じゃぁ今日のツナの素振りを一万回追加だな!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

兵士A「よーし。定時連絡終了。っと」

 

兵士B「んじゃ、お昼にするか?」

 

兵士A「悪いが今日は弁当持参だ」

 

兵士B「まじかよ?俺一人で食堂かよ?!」

 

兵士A「フフフ…悪いな!愛の弁当だ!」

 

兵士B「そういえばお前そろそろ彼女と一緒になるんだったよな?」

 

兵士A「おぉーっと!そっから先は言うんじゃない!死亡フラグになっちまう」

 

兵士B「すまんすまん。縁起でも無いこと言っちまうところだっ…」

 

兵士A「なんだ?どうした?俺の後ろがどうかしたか…」

 

兵士B「弁当は後回しだ!緊急連絡!レーダーに無数の反応アリ!」

 

兵士A「ちっきしょう!なんて数だ!この数は…」

 

兵士B「ダーカー現出!楽園に向かって真っ直ぐに進行している!繰り返す…」

 

 

 

 

 

 

 

 

楽園全土に緊急アラートが響き渡る。

私は一度も聞いたことがないが、直感でわかる

何者かが楽園に害をなそうとしている…

 

 

急いで玉座の間へと走りドアを開けるなり大声で叫んだ。

 

 

「父上っ!?ご無事ですかっ!?一体何事ですかっ!?」

 

「アスカよ。儂は大丈夫じゃ

見張りの兵士から連絡があったのじゃが…

ダーカーが楽園に進行しておる…」

 

「なんですって!?それで?!被害は?!」

 

「落ち着くのじゃ、アスカよ。今から話すところじゃ」

 

「はっ!取り乱して申し訳ありません」

 

 

深々と頭を下げ、一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせる

 

 

「ダーカー郡は北から楽園に進行しておる。

幸い北部は農業地帯じゃ。鳥類への被害は今のところない。

察知が早かったため、民の避難もスムーズに進んでおる…」

 

 

良かった…流石楽園の兵士達だ。

父上の話を聞く限りでは民への被害は無さそうだし…

 

 

「進行速度もダーカーにしては速くない。

このまま遠距離で牽制を行い、守備を固めれば楽園への被害は最小限で済むじゃろう」

 

「つまり…牽制を行いつつ、北の農業地帯で迎え撃つと…?」

 

「それが一番良いじゃろう」

 

「待ってください!」

(オイオイ…本気で言ってんのかよソレ)

 

 

父上の話を遮るように声がした。

声の主は私の姉のマリア姉さんだ。

 

いつもの見慣れたドレス姿ではなく、背中が大きく開き足元も動きやすいようにスリットが入っている…

つまりCODEをいつでも解放できる動きやすい服装だった。

完全な戦闘態勢だ…

 

 

「何か…あるのかの?」

 

「はい。父上の作戦に問題があると言いたいのではありませんが…

あまりにも解せません」

(チィと考えたらわかる事じゃねーカヨ)

 

「解せぬとは…一体どうゆうことじゃ?」

 

「はい…ダーカーの進行速度が『遅すぎる』のが一点。

また、先ほど言ったようにこちらの守備が『間に合ってしまう』のが一点。

おかしいとは思いませんか?」

(陽動、陽動、それ以外に考えられまセーン)

 

「どうゆうことじゃ?」

 

「率直に言わせて頂きますと、今進行しているダーカーは…陽動ですわ」

(ピンポーン)

 

「なんと…!?」

 

 

マリア姉さんの言葉は、まるで全てを見通しているかのようだった。

 

 

「どうゆうことですか?

姉上の考えを私にもわかるように説明してください!」

 

「そうですね…

今進行しているダーカーが陽動とは言いましたが…

あの数が捨て駒とは考え難いです。

あくまで本隊としてこちらの本隊を足止めをするのが役割でしょう」

(ハイ。正~解。続けて~)

 

「なるほど…それから?」

 

「ダーカーが楽園を落とす気ならば…の仮定の話になりますが…

東側から南側にかけて、楽園は山に覆われていますので、楽園内に直接現出しない限りは問題ないでしょう。

そして楽園にはお母様の結界がある為に出現することは絶対にありえせん。

 

西側ですが…こちらもありえません。

アルビノさんとバロン様が出発した方角ですからね…

万が一、西側なのであれば、あのお二人に蹂躙されていることでしょうし、何らかの連絡が入るはずですわ。

 

つまり、残るのが南西側…楽園の外側から一番近い所ですわね。

幸か不幸か今の時期は霧が出ていますので…

ここに進行速度の速いダーカーを集めて、前後で楽園を攻めるつもりでしょう

ここからなら一気に楽園中央を強襲できますし…

何より防衛する側から見れば一番最悪の二方面展開を強いられます」

(ハイ、またまた正~解。クソ親父の作戦のじゃ積みだぜ。積み)

 

 

まるでこの作戦を立てたのがマリア姉さんじゃないのかと疑ってしまうほど、

淀みなくスムーズにダーカーの作戦を説明していた。

流石は正当王位継承者…私だって座学は学んでいるが…

マリア姉さんとは比べ物にならない。

 

 

「フム…流石じゃのう…

しかしあの数のダーカーを止めるとなると、こちらも本隊を出さずにはおれんじゃろ?」

 

「えぇ、そう思います。

ですので、南西側には最低限の戦力で、分隊を撲滅しなければなりません」

(そーゆーこと。つまり今の戦力なら…)

 

「危険…そう仰りたいのですね?」

 

「えぇ…ですので、父上は本隊を率いて北側の防衛に当たってください

南西側には…私が参ります!」

(しかネーよな。)

 

「そんなっ!?いま危険と言ったのは姉上ですよ?!」

 

 

マリア姉さんの言葉の真意が図れない。

だって、単純な戦闘力だけなら私の方が上だ…

 

 

「……兵の数はそこまで割けんぞ」

 

「構いません。

私の考えが間違いであった場合、苦戦を強いられるのは北の本隊です。

私には…そうですね…?

三名の補助特化要員を貸していただければ…」

(ぶっちゃけると邪魔なンだよな。そこらへんをウロチョロされるとよぉ)

 

「本気ですか?!姉上?!

たった四人で一体何匹のダーカーを相手にすると思っているのですか?!」

 

「補助特化の兵…?

……っ!!

そうか…あれほど忌み嫌っている【魔眼】を解放するか…」

 

「仕方ありませんわ…楽園の一大事ですから」

(ヘイヘイヘイ!!久しぶりに全力で暴れられるってわけですかー?)

 

 

【魔眼】…?一体何のことだ?

マリア姉さんの見えない右眼に関係があるのか…?

それともマリア姉さんには私の知らない何かがあって、少数でも戦える自信があるのか…?

 

 

「一体…どうゆうことですか…?」

 

「うふふ…アスカちゃんには内緒の話ですよ」

(ッシャァ!テンション上がってきたぜぇ!)

 

 

そういって笑いかけるマリア姉さんはいつもの優しい笑顔だった

 

 

「では、すまんが【シスター】は補助部隊を連れて南西の防衛に当たってくれ!

アスカは儂と一緒に敵の本隊を迎え撃つのじゃ!」

 

「ラッピーガール【シスター】の名に懸けて…

(オーライ!オーライ!任せときな!!!)

 

「承知!」

 

 

父上の号令に跪き頭を垂れる。

 

 

この時の身体の震えが後の恐怖からくるものだと愚かな私は気付けなかった。

あの時の私に恐怖を感じ取ることが出来ていればこんな結末にはならなかったのではないだろうか?

いいや…それこそ無意味だ…

あの時の私にはどうすることも出来なかったのだ…

 

 

 

 

 

楽園崩壊まで…後三時間

 

 

 

 

 

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